2010/08/16

21世紀人間論

ここではないどこかへ行ってみたいという、未知の場所とそこでの新たなる出会いへの憧憬は、人間なら誰もが持つ基本的欲求である。元々我々ヒトは、人類史上ほとんどの間、移動を繰り返して来た。水や食料などの自らが必要なものを求めて住む場所を変えるスタイル。これが「ノマド(遊牧民)」と呼ばれているものだ。現在我々が行っている「会社」などの組織に属し定住するという生活方法は人類の歴史を遡ってみてもまだまだ短い歴史なのだ。

我々は何故定住生活を始めたのか?それは特定の土地で農作物を安定的に育てるということがきっかけだった。しかし時は流れ、現代人のほとんどが第3次産業に従事し、農耕のようにその場所にいなくてはいけないという職業についているわけではない。さらに、テクノロジーが進化し、自分の周りのものがどんどんデジタル化=非物質化した今、物理的にも精神的にも一つの場所に囚われた生き方というのは、いかにも古い時代のものとなっている。

08年の金融危機を予想したヨーロッパ最高の脳とも呼ばれているジャック・アタリ氏は言った。われわれヒトは再び移動しながら生きる「ノマド」としての生活に戻りつつある。そしてモバイルツールなどのデジタルメディアを駆使しながら、世界中どこへ行っても生きていけるヒトの事を「ハイパーノマド(超遊牧民)」と呼び、世界はいずれごく少数の「ハイパーノマド」とその他大勢の「下層ノマド」に分かれて行く、と。

ここで重要なのは「なぜ移動しながら生きていかなければならない?」かだ。前述した考えを様々な人に話すと必ず聞かれる質問だろう。なぜ住みやすい東京を離れなくてはいけない?欲しい物が全て手に入る日本でいいだろう?
が、しかし理由は簡単だ。我々日本人は統計的に見ても海外旅行後進国と呼べるほど国際経験が乏しいし、また昨今では最も衝撃的となった事件である世界金融危機は一国の力だけではとうてい解決する問題ではないからだ。国家や組織に守られていた個人も、危機管理等をグローバルな視点で行い、個人レベルで生き残る術を身につけなければいけない時代となった。「小さな場所から出て、自分の目で確かめる」ことこそ今やっておくべき最大のテーマ。グローバリゼーションの波は既に目の前まで来ているのだから。



参考文献:


21世紀の歴史――未来の人類から見た世界
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